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がん保険はもったいない?加入しない方がいい?
がんしか保障されないがん保険に加入するのはもったいないという声を聞いたことはあると思います。
現代は、日本人男性が生涯でがんになる確率は62%、女性は46%で、2人に1人ががんになる時代ですが本当にがん保険はもったいないのでしょうか。(国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」2014年データ)
もしがん保険の必要性を知らず、もったいないと決めつけてがん保険に加入しないと後々後悔することになるかもしれません。
なんのがん保険が自分にいちばん合っているのかは、正直、豊富な専門知識がないと記事を読んでも判断できません。
3つの質問で簡単に見極めましょう。
この記事では、がん保険が本当にもったいないのか明らかにするため、以下のことについて解説します。
- 30代、40代、50代、60代などの年代別のがんの必要性
- 独身男女の方にとってがん保険はもったいない?
- がん保険のメリット・デメリット
FP紹介:森田俊介
FP(ファイナンシャルプランナー)として保険専門の大規模サイトを自ら運営。
2018年よりがん保険おすすめ.jpを監修している。
がん保険は本当にもったいないのか、必要なのかを知り後々後悔することがないようぜひ最後までご覧ください。
がん保険もったいないかはケースごとに変わる
がん保険がもったいないか、つまり、がんになった場合に求める保障の内容は、年齢や既婚かどうか、家族の有無、その他のライフプランによっても変わってくると思われます。
また、それによって保険料も大きく変わってきます。
例えば、独身の若い方と40~50代の働き盛りでは、当然生活環境が違いますので、保障内容も異なりますし、保険料も若い方は安く、40~50代の方は高くなりますよね。
現代のがん保険の特徴
今と昔ではがんに対する認識が変わったため、がん保険の認識も変わっています。がん治療の技術発展により、がんはいまだに死因1位の病気ですが、治る病気として認知され始めています。
そのため、がん保険もがんで死亡したときに備えるための保険ではなく、がんを克服して、元の生活を取り戻すまでの過程を支えるような保険となっています。
そのため、具体的にがん保険の特徴として、セカンドオピニオンサービスや、緩和ケアなどの付帯サービスのような手厚いサポートが付けられるようになりました。
特にがん家系と言われる方はがん保険に入っておくことで金銭的な負担を心配しなくてすみます。
年齢ごとのがん保険の必要性・もったいないのか
最初に、年代別にがん保険の必要性やもったいないのかを解説していきますが、まず2014年の年代別・男女別のがん羅患率(人口10万人対)のデータを折れ線グラフにしたものを見てみましょう。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
女性は年齢とともに緩やかに上昇していますが、男性は50代くらいから羅患率が上がって女性を超え、その後急激に上昇し、女性と大きな差があるのがわかります。
30代のがん保険はもったいない?必要性は?
上記のグラフのように30代のがんの罹患率は低いため、がん保険に加入するのはもったいないんじゃないかと感じるでしょう。
しかし、状況を考えて、30代といえば、20代と違って少しずつ健康のことも気になる年代ではないでしょうか。
また、そろそろ責任のある仕事を任されたり、お子さんのいる方もいらっしゃるでしょう。
独身の方でも結婚の予定がある方も多いかと思います。
このように、30代は様々なライフイベントを控えており、貯蓄がある方でもなかなかがん保険まで対応できないという方が多いかもしれません。
ですが、30代はがんの罹患率が低いからこそ、加入が断られにくく、保険料も安いという大きなメリットがあります。
ちなみに、40代になると、男性で287人、女性で675.6人と30代の倍以上の人数に増加します。
30代の安い保険料のうちに終身の保険に加入しておけば、罹患率の上がる50代以降も割安の保険料で安心を確保することができるのです。
必要性自体は低いため、がん保険をもったいないと感じるかもしれませんが、加入のしやすさ、保険料の安さなどメリットも存在します。
40代のがん保険はもったいない?必要性は?
「年齢ごとのがん保険の必要性・もったいないのか」のグラフではがんの罹患率は40代から大きく上昇し始めています。
もし、がん保険に加入せずがんにかかってしまうと、本来必要な治療費が保障されないばかりか、その後にがん保険に入ろうとしても、既往歴のために加入できない、というリスクもあります。
また、もうひとつのデータとして、これから何年後までにがんにかかる可能性はどのくらいか、という男女別のデータがあります。
<男性>
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 |
20歳 | 0.2% | 0,8% | 2% | 7% | 20% | 41% |
30歳 | 0.6% | 2% | 7% | 20% | 41% | |
40歳 | 1% | 7% | 20% | 41% | ||
50歳 | 5% | 19% | 40% | |||
60歳 | 15% | 38% | ||||
70歳 | 29% |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
これを見ると、男性は、30歳のそれぞれの%に比べて、40歳は10年後が1.6倍、20年後が3.5倍、30年後は2.8倍、40年後は2倍と大きく増加しているのがわかります。
<女性>
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 |
20歳 | 0.3% | 2% | 5% | 10% | 18% | 29% |
30歳 | 1% | 5% | 10% | 18% | 29% | |
40歳 | 3% | 9% | 17% | 28% | ||
50歳 | 6% | 14% | 25% | |||
60歳 | 9% | 21% | ||||
70歳 | 14% |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」
また、女性は40歳は10年後が3倍、20年後が1.8倍、30年後が1.7倍、40年後が1.5倍と、男性ほどではありませんが、同じく上昇しているのがわかります。
40代は、収入や貯蓄が多い方でも、一方で住宅ローン、子供の教育費などの支出も多い世代です。
がん保険に入っておけば、これらのライフイベントのための貯蓄に手を付けることなく、がん治療に専念できるといえるでしょう。
50代のがん保険はもったいない?必要性は?
「40代のがん保険はもったいない?必要性は?」の表からわかるように、50代はその後のがんの罹患率は40代のそれぞれの%よりも増えており、40代にも増してがん保険の加入が必要に思えるかもしれません。
そこで、気になる保険料も40代と比較してみましょう。
こちらは、A社の年代別男女別の保険料の一覧です。
保険期間は終身、保険料の払込期間も終身払いで、主な保障内容は、がん診断一時金が100万円、先進医療給付金特約などです。
これを見ると、特に男性40歳は4,085円、50歳は6,092円と約2,000円も多くなっています。
1年で73,104円(6,092円×12ヶ月)、終身払いですのでこの金額が一生続き、80歳では2,193,120円とかなりの金額になってしまいます。
一方で、1回の入院治療にかかる治療費(健康保険3割負担)と日数の目安は、治療費は主ながんで20万~30万程度、入院期間は13日から19日くらいとなっています。
通院治療などで高額になった場合も、自己負担額には上限があるため、月収の目安が28万〜50万円の方で、1ヶ月の自己負担は8万~9万程度です。
80歳までの保険料の総額(2,193,120円)と単純な比較はできないかもしれませんが、50代でがん保険の加入を検討する場合は、支払う保険料と治療費をしっかり比較、検討することが重要です。
60代のがん保険はもったいない?必要性は?
冒頭の「年齢ごとのがん保険の必要性・もったいないのか」の折れ線グラフを見ると、(特に男性は)60代以降から、がんの罹患率が急激に上昇しているのがわかります。
ということは保険料のことも気になりますよね。
先の加入年齢別保険料の表を見ると、60歳男性は月額9,161円、これは50歳男性に比べると、3,000円以上も高くなっており、80歳が男性の平均寿命だとすると、保険料の総額は2,198,640円になります。
一方で、1回の入院治療にかかる治療費と日数の目安は、「50代のがん保険の必要性」のところで説明したとおりですが、50代と大きく違うのは収入です。
60代は定年を迎え、65歳まで再雇用となっても現役時代の収入の6~7割程度、65歳で年金も現役時代の半分程度というデータもあります。
十分な貯蓄をお持ちの60代の方も多いかと思いますが、一般的には、現役時代からかなり減ってしまう収入の中で、月額9,161円の保険料はかなりの負担になると思われます。
60代から新たにがん保険に加入するのは少しもったいないと感じてしまうので、公的保険などでカバーする方がよいかもしれません。
独身女性・男性のがん保険はもったいない?必要性は?
独身の方のがん保険もったいないのかについても考えてみたいと思います。
保険に未加入のままがんにかかった場合、独身の方にとっても不安になるのはなんといってもお金のことですよね。
独身の方は頼れる配偶者がおらず、家族にも頼れない場合など、自分が仕事を休めば、即収入が減ってしまいます。
健康保険による傷病手当金で給料の3分の2はカバーされますが、家賃や公共料金などの通常の生活でかかる固定費もありますし、それに加えてがんの治療費がかかり、さらにベッド代や食事代などの細かい出費もあわせるとそれなりの金額になってしまいます。ですので、独身の方もがん保険に加入しておくと安心でしょう。
また、保険料のことを考えると、できれば若いうちに加入することをおすすめします。
保障内容に関しては、最近のがん治療は、入院+手術よりも通院のみの治療の方が多くなっており、入院や手術の給付金のために保険料を高額にするのはあまり意味がありません。
一度にまとまったお金を受け取れ自由に使える診断一時金などの保証が手厚いものがよいと思われます。
また、仮に一生涯独身が続く場合のことを考慮して、保障は一生涯続く終身型がよいでしょう。
ちなみに、独身の方は死亡後に残す家族がいないため、がん保険の死亡保障を大きくしすぎるともったいないので、お葬式の費用程度を考えておけばよさそうです。
がん保険のメリット・デメリット
ここでは、がん保険のメリット・デメリットのそれぞれの観点から、がん保険の必要性について考えてみます。
がん保険はがんに特化した医療保険ですので、通常の医療保険とは異なる様々なメリットがあるのがその特徴です。
一方で、デメリットと感じる点もありますので、それらを比較して、ご自身にとってのがん保険の必要性をしっかり検討してみてください。
がん保険のメリット
まず、がん保険の主なメリットを見ていきましょう。
・診断給付金を受け取ることができる
保険会社によって金額は異なりますが、概ね100万~200万のお金を診断給付金として一度に受け取ることができます。
まとまったお金を受け取ることで、とりあえずの経済的な不安が軽減され、今後の生活や治療方針などに関してもあわてず対応できるのは精神的にも大きいですね。
・入院給付金の支払い限度日数がない
これは、通常の医療保険との大きな違いでもあるのですが、がんは転移や再発などで治療が長期化し、入退院を繰り返すことも多くなる可能性があります。
そのため、入院給付金の限度日数がないのは大きなメリットと言えるでしょう。
・がんに特化した手厚い保障を受けられる
がんは通常の病気と違い、転移や再発の可能性もあり、そのため治療が長引くことがあります。
がん保険は、先に説明した診断給付金や入院給付金の限度日数がないなど、通常の医療保険にはない、がんに対して手厚い内容が保障されています。
2人に1人ががんにかかる現在、がんに特化した手厚い保障が確保されていれば、まずは安心といえるのではないでしょうか。
・収入保障型の保険がある
がんにかかった場合のリスクとして、収入が減るという経済的な負担があります。
現役世代でがんにかかると多くの人は仕事が制限され、年収が2~3割減るというデータもあります。
収入減をカバーする保障として診断一時金もありますが、それとは別に、がんと診断確定された時に継続的に年金を貰うことができる収入保障型の保険で対応することができます。
がん保険のデメリット
一方で、デメリットとしては次のようなことが考えられます。
・医療保険と重複している保障内容がある
入院給付金や手術給付金などがこれに該当します。
仮に、両方に加入してがんになった場合は、それぞれから給付金が出るので、より手厚い保障を得たい方は両方入っておいてもよいかもしれません。
一方で、入院給付日額が5,000円~10,000円程度の最低限の保障で構わないという方は、医療保険だけで十分といえるでしょう。
・90日間の待機期間がある
※90日という日数は、保険会社やがん保険の商品により異なります。
契約後90日の待機期間があり、この間にがんと診断されると、がん保険は無効となってしまいます。
がんは自覚症状がないケースが多く、加入時の健康状態の告知段階では本人も知らなかったという場合や、自分ががんにかかったかもしれないという不安のために、病院で受診する前にがん保険に加入する場合が考えられます。
これらのことを防ぎ、契約の公平性を保つために、90日間の待機期間が設けられています。
・再発した場合に保障を受け取れない場合がある
診断給付金の支払いが1回のみの場合は、がんが再発した時には給付金を受け取ることはできません。
また、ほとんどのがん保険は、最初の診断給付金から1年、2年、3年経過後などの期限を設けてあり、その期間内に再発した場合も診断給付金が受けられません。
・死亡の保障がない、少ない
がん保険はその治療に重点をおいた保険であるため、死亡の保障はついてない、もしくは少ないことがほとんどです。
残されたご家族の生活などのためには、別途、生命保険の加入を検討する方がよいでしょう。
がん保険がもったいない・不要だと考える人の意見
ここまでのがん保険のメリット・デメリットをふまえて、がん保険をもったいない・不要だと考える人の意見をまとめてみました。
がん保険がもったいない理由①収入、貯蓄ともに十分にある
がん保険のメリットの主なものは、診断一時金や入院給付金の日数の無制限などの経済的な負担に対応するものでした。
ですので、収入や貯蓄で十分カバーできる方はがん保険の加入は必要ないといえるかもしれません。
がん保険がもったいない理由②がん以外にも幅広い病気に備えたい
がん保険はがんに特化した保険で、がん以外の病気の保障がないため、がん保険はもったいないという見方もできます。
がん以外の病気にかかるリスクにも備えたいという方は、通常の医療保険にがんの特約をつけるというやり方の方がよいでしょう。
掛け捨てのがん保険はもったいなくない
貯蓄型のがん保険と違い、掛け捨てのがん保険は保険料が返ってこないので、もったいないのではと感じる方もいらっしゃると思います。しかし、基本的には掛け捨て型のがん保険がおすすめです。
掛け捨て型のメリット
掛け捨て型という言葉で掛け捨てにマイナスのイメージを持ちやすいですが、
掛け捨て型のメリットには以下のようなものがあります。
- 貯蓄型より保険料が安い
- 保障内容が充実している
- 保険の見直しがしやすい
家計に優しく、将来的なことに備えて保険の切り替えがしやすいことは掛け捨てならではの魅力です。
掛け捨て方のデメリット
掛け捨て型のデメリットは主に以下の2つです。
- 途中で解約する場合に解約返戻金がない
- 更新のタイミングで毎回見直す必要がある
この2つを見てみると、そこまでデメリットと感じることはないと思われます。そのため、「掛け捨て=もったいない」
というイメージはあまり正しくないものとわかります。
がん保険の見直し
がん保険は少なくとも10年に一回は見直しが必要です。しかし、見直しと言ってもがん保険の何を見直せばいいのでしょうか。
以下で見直しの際に見るべきポイントを解説します。
見直すポイント①:今の治療状態が適切か
がん保険の今の治療状態があっているかどうかを確認します。通院治療、入院のどちらに備えたいのか。抗癌剤や放射線による治療か、先進医療に備えたいのか。このような、自分がどの治療に重点をおいて保障が欲しいのか見直すことが重要になります。
見直すポイント②:診断一時金
保険会社によって同じ診断一時金でも、2年に1回である場合もあれば、一生に1度というがん保険のタイプもあるためしっかり確認しておきましょう。がんは再発リスクが十分にある病気です。1年に1回診断一時金が出るタイプが一番ありがたいですよね。
見直すポイント③:就業不能保障
がんで治療に専念することになった時に起こる問題として、生活費を稼ぐことができなくなることによる私生活の困窮です。意外とこの点は実際にがんにならないと気付きません。就業不能保障が付いているタイプのがん保険に入ることによって、金銭的な側面で神的負担が軽減されるため、検討した方が良いです。
見直すときの注意点①:免責期間
がん保険を見直して新しいがん保険に乗り換える際に免責期間に気をつけましょう。免責期間の間にがんになればがん保険の契約をしていても、保障の対象外となります。ほとんどの保険会社は免責期間を90日としています。
免責期間の対策としては、新しいがん保険の免責期間の間、前の保険に加入しておくことです。そうすることで無保険状態を回避できます。
見直すときの注意点②:上皮内がん
上皮内がんとは軽いがんのことです。上皮内がんに関しては保険会社によって、保障の対象になるかどうか変わります。特に若い女性は子宮がんや乳がんの上皮内がんの可能性が高いため、上皮内がんが対象かどうかは重要なポイントです。
まとめ:がん保険はもったいない?掛け捨てはもったいないのか?
がん保険はもったいないのかどうかについて解説してきました。
最後にがん保険はどんな人に必要か、簡単におさらいしてみましょう。
・がんと診断された時点で、まとまったお金があるのは安心
ある程度の貯蓄をされている方は多いと思いますが、そもそもその貯蓄は、子供の教育や住宅ローンなど目的のある貯蓄であることが多いため、その貯蓄に手をつけることなく、診断給付金を受け取って、がん治療に専念できるのは大きな安心と言えるでしょう。
・がんの治療に関して手厚い保障を受けたい
がんの治療に関して、通常の医療保険や公的保険では十分にカバーしきれない部分、例えば最新の自由診療の治療を受けようとした場合までしっかり保障してくれるのは、やはりとても安心ですよね。
2人に1人ががんにかかる時代です。ご自身のためもさることながら、ご家族のことも含めて、がん保険が自分にとってもったいないのか、必要なのかよく考えてみてください。